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☆ スバルの星ものがたり ★

No.16-1 Subaru

1.ギリシア神話での星ものがたり
星になった美しい姉妹


ある明るい晩のことです。

プレアデスの七人姉妹たちが、
ボイオテイヤの森で踊り遊んでいると、
大男の狩人オリオンが、
獅子り皮を身にまとい、
太いこん棒をかついで、踊りの輪の中に
むりやり入りこんできました。

「かわいい娘さんたち、こんばんは。
わしも仲間に入れてくれんかな…。」
オリオンは、前々から美しい
プレアデスの七人姉妹たちが
お気に入りだったのです。
でも、七人姉妹たちは、乱暴者のオリオン
があまり好きではありませんでした。

「キャー、こわいわ…。」
おどっていた七人姉妹たちは、突然現れた
オリオンの姿にびっくりぎょうてん、
大あわてで逃げだしました。

もちろん、オリオンはそんなことで
あきらめるものではありません。
「これこれ、おまちなさいったら…。」
そう言って、しつこく追っていきます。

プレアデスの七人姉妹は、
森の奥へ奥へと逃げのびたり、
空へかけあがったりしてみますが、
オリオンはあきらめるふうもなく、
なんと5年間も彼女たちを
追いかけまわしました。

これには、さすがの彼女たちもうんざりし、
逃げくたびれてしまいました。
「こうなったら、女神アルテミスさまに
助けてもらうことにしましょう…。」

「さあさあ、わたしの衣の中に
おかくれなさい…。」
女神は、そう言って、
七人姉妹たちを衣のすそにかくし、
そ知らぬ顔をしていました。

「へんだなあ。わしのかわいい娘たちは、
どこへ行っちまったんだろう…。」
オリオンは、あたりをキョロキョロ
見回しながら首をかしげ、
七人姉妹が女神の衣の中で
息ををひそめているとも気づかず、
ぶつぶつ言いながら、森の奥へ
姿をけしてしまいました。

「もう、だいじょうぶ。」
女神がそう言って衣
のすそを上げてみると、
七人姉妹たちは美しい七羽のハトに
姿を変え、空へ飛び上がりました。

大神ゼウスは、その様子を目にして、
彼女たちを星に変えてしまいました。

こうして、プレアデスの七人姉妹たちは、
美しい星の群れとなって、
かがやきだしたといわれます。

ところが、その後、オリオンもすぐ近くで
星座になったから大変です。

またまた彼女たちを追いかけ始め、
このため、今も
オリオン座に追われるように、
プレアデス星団は、星の日週運動で
西へ西へ逃げるように
動いていくのだといわれます。



☆ スバルの星ものがたり ★

No.26-1 Subaru

2.日本での星ものがたり
浦島太郎とスバルの子どもたち


ある日のこと、
丹後の若い漁師、浦島太郎が、
沖合いに小舟をこぎだして、
釣り糸をたれていると、グィーッと
大物の手ごたえがありました。

力任せに釣り上げてみると、なんと、
かかったのは五色に光りかがやく、
美しい大亀ではありませんか。

「これは、すごい…。」

浦島太郎が大喜びしていると、
なぜか急に眠気がおそってきて、
小舟の上でつい、とろとろ
まどんでしまいました。

どのくらい時間がたったのでしょうか。
ふと目をさましてみると、
おどろいたことに、
亀は輝くばかりの美しい乙女に
変身しているではありませんか。

「人里遠くはなれた海の上だというのに、
たちまちのうちに現れたあなたは、
いったいどなたさまで…?」

目をこすり、浦島太郎はたずねました。

「わたしは、神仙の国のもの。
あなたと夫婦になって、
末永くそいとげるつもりで
やってまいりました…。
どうか、私についてきてくださいまし。」

こうして浦島太郎は、いつのまにやら、
海の中へ導かれていきました。

「ここでおまちくださいましね…。」

乙女が大きな門の中へ、
すい込まれるように姿を消していくと、
入れ替わるように七人のかわいらしい
童子たちが走りでてきて、
言いました。

「あ、この人が亀比売(かめひめ)さまの
旦那さまになられたお方だ…。」

つづいて、八人の童子たちが
走り出てきて、口々に言いました。

「あ、この方が亀比売さまの
旦那さまになるお方だ…。」

「ほう、亀比売さまというお名前か…。」
浦島太郎は、初めて美しい
乙女の名を知りましたが、
ほどなく亀比売が宮殿から
現れましたので、たずねました。

「あの童子たちは何者です?」
亀比売はにっこりして答えました。

「ああ、あの子達ですか。
七人の童子はスバル星で、
八人はあめ星の童子たちなんですのよ…。」



☆ スバルの星ものがたり ★

No.36-1 Subaru

1.マーシャル諸島での星ものがたり
島の王になったスバル星


ある島に、夜空輝く星々の母親、
リゲダネルが住んでいました。

リゲダネル母さんは、
ぎょしゃ座の一等星カペラで、
その長男ジェムールはさそり座、
末っ子ジェブロはスバルでした。

ある日のこと、リゲダネル母さん
の子供の星たちが、
次々と空からおりてきて、
ある相談がまとまりました。

それは、母親の住むアイリンラブラブ
という島のすぐ東の島に、
いちばん早くたどりついたものを
その島の王様にしようという約束事でした。

早い者勝ちというので、
兄弟みんな大急ぎで
舟出のしたくにかかりました。

リゲダネル母さんは、まず、
長男の舟に声をかけました。

「わたしをのせていっておくれ…。」

長男のジェムールは、
母親の重そうな荷物を見ると、
舟足がにぶるからといって断りました。

他の息子たちも、
同じ理由で断りました。

ただ、末っ子ジェブロだけは、
快くひきうけてくれました。

「もちろんですとも。お母さん、
いっしょに島をわたりましょう。」

じつは、
母親が持ちこんだ重い荷物は、
舟に帆をとりつけて走らせる、
それまでだれも知らなかった
道具だったのです。

その帆のおかげで、ジェブロの舟は、
追い風によってぐんぐん進み、
いちばんおくれて出発したのに、
かいでこぐ、他の兄たちの舟をぬき、
たちまち先頭を行く長男の舟
に追いついてしまいました。

「末っ子のくせに、なまいきなやつ…。」

ジェムールは、長男の威光をかさに、
弟の舟を横取りしようと、
むりやり乗りこんできました。

末っ子ジェブロは、
母親と共に海へとびこみ、
島を目指して泳ぎ始めました。


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